薬剤師アララ、今日の「なるほど。」

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全身性エリテマトーデスについて、お勉強

みなさん、こんにちは。

エリテマトーデス、シェーグレン、チアノーゼ、レイノー

カタカナって覚えづらいです。泣

そして、膠原病の患者様が多い私の勤める薬局では避けて通ることはできません。

今日は全身性エリテマトーデスについて、お勉強です。

 

概要

    • 全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)はT細胞、B細胞等に起因する免疫異常を背景に、皮膚、腎臓、脳等多彩な臓器を傷害する代表的な自己免疫性疾患のひとつ

疫学

    • 有病率は10万人当たり20~150人と報告され、好発年齢は 20~40歳台で男女比は 1:9 で女性に多い

    • 2019 年における我が国 の指定難病の医療費助成者数は約6万2千人

    • コホート研究で、SLE発症時に24.5%がループス腎炎、18.5%が漿膜炎、12%が神経精神ループスを合併していたという報告がある

    • SLEは何らかの遺伝的素因を背景として、紫外線(海水浴、日光浴、スキーなど)、風邪などのウイルス感染、怪我、外科手術、妊娠・出産、ある種の薬剤などが誘因する環境因子として知られている。

    • 一卵性双生児でのSLEの一致率が25~50%程度である ことからも、環境因子の重要性が示唆される.

症状

    • 蝶形紅斑がよく知られているが、病変の所在や程度は多様
    • 再発と完解を繰り返す

分類基準

    • SLICC分類
       2012 年、Systemic Lupus International Collaborating Clinics(SLICC)が提唱
    • EALAR/ACR SLE分類基準(最新)
      2019 年、より高感度、高特異度の分類を目指し欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism:EULAR)とACRから新たな SLEの分類基準(表 2)が提唱された7).;日本では検証中
      • (抗核抗体が80倍以上が必須である)

治療目標

    • 不可逆な臓器障害の評価
      • SDI (Systemic Lupus International Collaborating Clinics Damage Index);(PSLによるSE、白内障骨粗しょう症も含む)
    • 疾患活動性評価
      • SLEDAI (SLE disease activity index) 
        • 指定難病の臨床調査個人票にも採用
        • 簡便だが網羅性に欠ける
        • 疾患活動性評価のため、重症度を反映しない
      • BILAG Index (British Isles Lupus Assessment Group Index)
        • 煩雑だが汎用されている
    • 社会的完解
      • 子供の運動会に参加するなど、自分の生活目標が達成されること。総合指標やそれぞれの臓器についての寛解を評価することが目的。
        (↑薬剤師として、副作用が妨げになっていないか、心のケア含めて聞き取りが大切なところだと思いました!)
    • 完解基準 将来の臓器障害のリスクなどが考慮されている
      • 近年はT2T treat to targetの考えが定着
      • 少しずつ変化している
      • 2021 年にEULARの年次会議で 2021 年DORIS (definitions of remission in SLE)の寛解基準が発表され,clinical SLEDAI=0かつ PGA<0.5 かつPSL換算 5 mg/日以下の状態
      • lupus low disease activity state(LLDAS)が提唱された.LLDAS はSLEDAI-2K≤ 4(ただし腎炎、中枢神経、心血管系、血管炎、発熱、溶血性貧血、消化器症状を伴わない)、新規の活動性上昇なし、PGA≤ 1 を満たしたうえでPSL換算 7.5 mg/日以下で維持されている状態を示す.なおLLDASでは抗マラリア薬・免疫抑制薬の使用に制限はない. LLDASを観察期間の50%以上で達成されている場合、臓器障害のリスクが低下すること、6 カ月以内にLLDASを達成できない場合、早期の臓器障害の独立した予測因子であること等が明らかとなっており、LLDAS達成の意義が明らかとなってきている
        (↑ 処方解析をするうえで、一つの目安になりそうです!)

診療アルゴリズム

    • 2017年にB細胞を標的とした治療薬(B細胞活性化因子[BAFF]阻害薬)であるベリムマブ(商品名:ベンリスタ®)が国内で承認され、最近では2021年に炎症性サイトカインの一つであるインターフェロンαの受容体を標的とした薬剤であるアニフロルマブ(商品名:サフネロー®)が承認された。そのほかにもループス腎炎の治療に有効性が期待できる薬剤として、B細胞に発現するCD20を標的とした抗体であるオビヌツズマブ(商品名:ガザイバ®)やIL-17Aに対する抗体であるセクキヌマブ(商品名:コセンティクス®)などが治験で検証中
    • 血栓を作りやすい抗リン脂質抗体症候群を合併している方では、アスピリン、ワルファリンなどによって、血栓の予防が行われる
    • 腎不全のときの透析療法など、その病状に合わせて治療が行われます。また血行障害の強い方では、血管拡張薬などが使われる

その他

    • 日本の全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019
      • 海外などではSLEのループス腎炎などのガイドラインがあったが、包括的なものはなかった
      • 世界唯一の診療アルゴリズム、二次治療のエビデンスは少ないため、初回治療で完解に至らない場合には、三次治療に進む
    • 患者と医療者のコミュニケーションの課題
      • 倦怠感など、原疾患によるものか、薬剤性によるものか、言語化が難しい問題がある
      • 薬剤の追加、増量をおそれ、症状を伝えないケースがある
        (↑ お話ししやすい関係づくり、お声がけを心がけたいですね)

 

いかがでしたか?

治療目標や社会的完解については考えさせられるものがありました。

コミュニケーションにおける課題を念頭に患者様への服薬指導や体調確認にあたりたいものです。

それでは、また。

 

参考

http:// https://www.carenet.com/news/general/carenet/49119

全身性エリテマトーデスの病態と最新の治療

全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)|慶應義塾大学病院 KOMPAS

全身性エリテマトーデスの症状と臓器障害│SLE.jp

全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49) – 難病情報センター