この方にもタウリン酸(適応はミトコンドリア病?)
こんばんは。はぁ~今日もお疲れ様でした。
薬剤師の皆さんにもいらっしゃいませんか?個人的に気になる患者様というのが。
そうすると、その方の病気とか処方が気になってしまいますよね。
私にもそういった患者様がいらっしゃって、その方々が患っていると思われる疾患について調べました。
気になる患者様
共通点
気になっていた患者様はお二人いました。そして、共通点もありました。
- 小柄、可愛らしい
(私のような若いものがいうのは失礼かもしれませんが)背が高くなく、小柄で、かわいらしい、可憐な印象のお姉さま - 付き添いの方と一緒にご来局
片方の方は、いつもお母さまとお見えになり、もう片方の方はヘルパーさんと思しき付き添いの方といらっしゃっています - 付き添いの方を介し患者様と会話
いつもお話しするのは患者様ではなくて、付き添いの方を介して、というような形が多いように思います。 - タウリン酸、ビタミン剤の処方
そして、処方も共通する部分がありました。それが、タイトルにも書いている、タウリン酸です。
処方例
- 処方例:タウリン酸、ノイキノン®、シナール配合顆粒®、インスリン製剤、エルカルチン®FF,プルゼニド®、アルギU®配合顆粒、メチコバール®、エパデール®粒状カプセル、ルジオミール®、25mgアリナミン®F、など
- 処方例2:タウリン酸、ノイキノン®、シナール®配合顆粒、インスリン製剤など
(タウリン酸の適応)
…ということで、ミトコンドリア脳筋症改め、ミトコンドリア病について調べました。
ミトコンドリア病とは
概要
ミトコンドリア病は、ミトコンドリア機能が障害され、臨床症状が出現する病態を総称している。ミトコンドリアはエネルギー産生に加えて、活性酸素産生、アポトーシス、カルシウムイオンの貯蔵、感染防御などにも関わっているため、ミトコンドリア病ではこれらの生物学的機能が変化している可能性がある。しかし、現在のところ、ミトコンドリア病における機能異常の主体はエネルギー産生低下と考えられており、そのエネルギー代謝障害による病態が基本である。
症状と検査
症状は全身に表れる可能性があり、程度も多様。
ミトコンドリアの異常が現れるDNA変異が多様であること、また、ミトコンドリア病の多くが、正常なミトコンドリアDNAと異常なミトコンドリアDNAが混在している「ヘテロプラスミー」の状態で発症することが理由。(ホモプラスミーは細胞中のミトコンドリアがすべて正常もしくは異常という状態)ヘテロプラスミーの場合、異常DNAの割合が組織や細胞で異なること、異常DNAが一定以上になると機能障害が出る(閾値効果)などあるため。
特にエネルギーを多く必要とする脳や筋肉などは症状が出やすいことが知られていて、ミトコンドリア病は「ミトコンドリア脳症」「ミトコンドリア脳筋症」と呼ばれることもあります。
症状によって、卒中様症状を伴うミトコンドリア病(MELAS)、ミオクローヌスを伴うミトコンドリア病(MERRF)、慢性進行性外眼筋麻痺症候群(CPEO)、Leigh脳症など、さまざまな病気に分類されます。
(参考)診断の際には下記の症状が確認され、検査が行われている(難病情報センターより)
1.主要項目
(1)主症状
(筋症状)①進行性の筋力低下、横紋筋融解症又は 外眼筋麻痺を認める。
(中枢神経症状)②知的退行、記銘力障害、痙攣、精神症状、一過性麻痺、半盲、皮質盲、ミオクローヌス、ジストニア、小脳失調などの中枢神経症状のうち、1つ以上を認める。または、手足のしびれなどの末梢神経障害を認める。
(心、腎、血液、肝など臓器症状)③心伝導障害、心筋症などの心症状、肺高血圧症などの呼吸器症状、糸球体硬化症、腎尿細管機能異常などの腎症状、強度の貧血などの血液症状又は中等度以上の肝機能低下、凝固能低下などの肝症状を認める。
④低身長、甲状腺機能低下症などの内分泌症状や糖尿病を認める。
⑤強度視力低下、網膜色素変性などの眼症状、感音性難聴などの耳症状を認める。
(2)検査・画像所見
①安静臥床時の血清又は髄液の乳酸値が繰り返して高い、又はMRスペクトロスコピーで病変部に明らかな乳酸ピークを認める。
②脳CT/MRIにて、大脳基底核、脳幹に両側対称性の病変等を認める。
③眼底検査にて、急性期においては蛍光漏出を伴わない視神経乳頭の発赤・腫脹、視神経乳頭近傍毛細血管蛇行、網膜神経線維腫大、視神経乳頭近傍の出血のうち1つ以上の所見を認めるか、慢性期(視力低下の発症から通常6か月以降)における視神経萎縮所見を両眼に認める。
④骨格筋生検や培養細胞又は症状のある臓器の細胞や組織でミトコンドリアの病理異常を認める。
必要に応じて、以下の検査を行い、
⑤ミトコンドリア関連酵素の活性低下又はコエンザイムQ10などの中間代謝物の欠乏を認める。または、ミトコンドリアDNAの発現異常を認める。
⑥ミトコンドリアDNAの質的、量的異常又はミトコンドリア関連分子をコードする核遺伝子変異を認める。
遺伝
ミトコンドリア病の病因は核DNA上の遺伝子の変異の場合と、ミトコンドリアDNA異常の場合がある。
こどもへは母親のミトコンドリDNAが受け継がれる(父系遺伝は1例のみ)、変異や欠失、重複、DNA量の減少など。
核DNAの変化が原因で起こるミトコンドリア病のほとんどは常染色体劣性遺伝だが、症状にもよる。
治療
- 各臓器への対症療法。
例 てんかん→抗てんかん薬、難聴→人工内耳、心伝導障害→ペースメーカー、など - 原因療法
ミトコンドリア機能の低下を改善させる=代謝にかかわる物質やビタミンの使用
水溶性ビタミン類(ナイアシン、B1、B2、リポ酸など)
コエンザイムQ10(効果不明だが使用される)
アルギニン(ミトコンドリア病患者の治療薬として薬効を科学的に証明する臨床試験に至った薬剤として日本で初めて)
タウリン(MELASに適応)
調べ終えて
気づいたこと
タウリン酸には、ミトコンドリア病という難病に適応がありました。
私が患者様に感じていた共通点は、
- 小柄で可愛らしい=低身長
- どなたかが付き添いでいらっしゃる=易疲労、筋力低下、腎症状
- 付き添いの方を介してお話=難聴、精神発達遅滞などの精神症状
ということかもしれません。至るところにヒントはあるものですね。
まとめ
ミトコンドリア病とは
- 遺伝病であり、ミトコンドリアの機能異常に伴う様々な症状が含まれる
- 主には脳、筋、代謝、中枢神経症状
- 治療は各臓器に対する対症療法であるが、原因療法として水溶性ビタミン、タウリン酸、アルギニン、コエンザイムQ10などが用いられる
投薬時の患者様の印象は、病気が関係している可能性があり、投薬は病気による生活への影響を目の当たりにする大切な機会なのだと改めて気が付かされた出来事でした。
いや~、気になるとしっかり調べようという気になりますね!
勉強のモチベーションってアララにはとても大切です。
それでは、また。
~参考~
難病情報センター
タウリン酸98%「大正」添付文書
「ミトコンドリア病ハンドブック」←とってもわかりやすかったです!