薬剤師アララ、今日の「なるほど。」

アララな疑問を「なるほど。」に変えるブログ

ベーチェット病のガイドラインからポイントだけ!

 

こんにちは、薬剤師のアララです。

シェーグレン症候群の記事を終え、お次はベーチェット病

着々とカタカナの泥沼から抜け出しつつあるアララです!

だた、ベーチェット病っていろいろありますよね。

現場に出てから、「え?腸管型?神経型?そんなの習ってないよ~」と困ってしまいました。

ベーチェット病とは

全身臓器における炎症反応の亢進とその制御不全による病気です。

 

が、

 

ところで、自己”免疫”疾患と自己”炎症”疾患について、みなさま、区別ついていらっしゃいましたか?

たとえば、全身性エリテマトーデスは?シェーグレン症候群は?ベーチェット病は?

自己免疫疾患か、自己炎症疾患か、区別ついていらっしゃいましたか?

 

お恥ずかしいですが、私は区別、ついておりませんでした!(土下座)

膠原病の先生方の話を聞いていると「炎症主体の疾患だから免疫抑制薬は効かない」とおっしゃっていることもあります。自己”免疫”は「自分を攻撃すること」、”炎症”は「発赤、腫脹などの現象」とはなんとなくわかりますが。

自己”免疫”疾患は炎症がつきものだと思っていましたし、自己”炎症”疾患って、自己免疫が攻撃しているんじゃないの?一緒じゃないの?って思っていました。

 

そんな疑問をちょっと「なるほど。」に変えてくれた表が載っていました!

こうして整理されていると、「確かにー!」ってなりませんか?

そして、それぞれの疾患の位置づけは下記の通りになっており、グラデーションになっているようです。

「なるほど~。」って感じ、しませんか!?(しつこい)

私は2、30分はこの2つの表を眺めていられました。

病因

原因は不明です。
関連遺伝子が報告されているようですが、変異があっても発症しない地域が存在し、シルクロード沿いの地域に特有な環境因子が発症のリスク因子であることが強く疑われるそうです。
日本人、中国人ではトルコ人ユダヤ人などより家族内発症が少ないです。
ヘルペスウイルスなどの微生物など多様な因子が関与する多因子疾患とまとめられています。

症状

それでは、ベーチェット病の症状についてみていきます。主症状と副症状に分かれるようです。副症状が多彩です。患者さんによっては、3か月分ともなると他の疾患と合わせて薬が段ボール1箱くらいになる方もいらっしゃいます。

主症状

  • 口腔内アフタ性潰瘍
    • 90%以上でみられる
  • 皮膚症状
    • 毛包炎様皮疹、結節性紅斑、血栓性静脈炎など
  • 眼症状
    • ブドウ膜炎:発作が急性突発性であり比較的短期であることが多く、軽症の場合には自然軽快する場合もあるが、繰り返すのも特徴
    • 合併症として白内障、続発緑内障など
  • 外陰部潰瘍
    • 80%程度に見られる、特異度が高い

    • 有痛性、ヘルペスよりも潰瘍が大きい、鼠径部にできることも

副症状

  • 関節炎

    • 日本では57%に生じている

    • 治療を要さずとも自然回復することもあり、発作と寛解を繰り返す

  • 精巣上体炎

    • 日本では5%程度に合併しており、頻度は高くない

    • 感染を契機に悪化することもある

  • 腸管型

    • ベーチェット病の悪化によるものではなく、同時に発症するものをいう

    •  回盲部に存在する類円形の深掘れ潰瘍、突然の穿孔や出血など生命予後に影響する可能性も

    • 術後再発率が高く、複数回の手術を必要とすることも

  • 血管型

    • 完全型、不全型に動脈、静脈に画像、臨床的に大きな血管病変のあるもの

    • 頻度は高くないが予後に影響することも

    • 深部静脈血栓症動脈瘤・動脈閉塞、肺動脈病変、心症状など

  • 神経型

    • 急性型(ANB)

      • 発熱を伴って、片麻痺など多様な脳局所徴候

      • 眼発作に用いられるシクロスポリンによるANBは中止により再発しないと考えられている

    • 慢性進行型(CPNB)

 

治療、日常生活での注意点

治療は主にステロイド、再発予防などにコルヒチン、症状に応じてMTX、アザチオプリンなどの免疫抑制薬やTNFα阻害薬が使われます。
ガイドラインにはそれぞれ治療アルゴリズムが載っていますが、主なものだけ確認します。

主症状の治療

  • 口腔内アフタ性潰瘍
  • 眼症状
    • コルヒチンと低用量ステロイド寛解せず、視機能低下のリスク低い場合(step2A)と高い場合に(step2B)でわかれる
  • 外陰部潰瘍
    • 急性期 ベリーストロングのステロイド外用(難治例ではストロンゲスト)
  •  副症状
    •  関節炎
      • 急性期にNSAIDs、ステロイドを使用し、発作予防にコルヒチン、アザチオプリン、TNFα阻害薬。エビデンスが多くない。
    • 精巣上体炎
      • 明確な治療方針はなし
      • 抗菌薬、ステロイド、NSAIDsなど
    • 腸管型
      • 治療経験(クローン病含む)から成り立っており、エビデンスは多くない
      • アダリムマブ、インフリキシマブが適応を持つ

    • 血管型
      • ステロイド、アザチオプリン、MTXなど
      • DVTにはワーファリン
    • 神経型
      • シクロスポリンは用いない
      • 急性型にはステロイド、コルヒチンなど
      • 慢性進行型に大量ステロイドやアザチオプリン/シクロホスファミドは無効、メトトレキサート、インフリキシマブを用いる

モニタリングの際の注意

シクロスポリンについては疾患特有の注意が必要で、また、コルヒチンのモニタリングなどについては薬剤師として重要と思いました。

  • コルヒチン
    下痢、ミオパチー、白血球減少、血小板減少、精子減少、など起こるため、注意。シクロスポリンと併用の際にミオパチーが起こりやすい。
  • シクロスポリン
    急性型神経型ベーチェット病の発症を誘発することがあるため、既往のある者には使用しない(特に、TNFαとの併用でベーチェット病特有の副作用と記載あり)。中止によりその後再発しない。多毛、腎機能障害、白質脳症などにも注意。腎血流を減らすことにより、コルヒチンの作用増強が表れる。
  • TNFα阻害薬
    白質脳症感染症などの重篤な副作用に注意、シクロスポリン、ステロイドとの3剤併用で、感染症リスクはさらに高くなる。
  • 中止、減量について
    寛解が維持されている場合には中止、減量などの考慮をしてもよいが、病型や症状によっては中止は推奨されず、また、エビデンスは豊富とは言えない。

 

おわりに

いかがでしたか?
自己免疫と自己炎症の違い、シクロスポリンが急性神経型ベーチェット病の誘因になること、コルヒチンとの併用でミオパチーが増える、など、ガイドラインを読んで知ることができて良かったな、しっかりモニタリングしないとな、と思いました。

疾患特有の薬剤の副作用や、よく使われる組み合わせによる相互作用など、これからも他のガイドラインを読むときには是非チェックしてみます!

参考
ベーチェット病診療ガイドライン2020

https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0426/G0001177